男の子・女の子

私が店で接客しながら見てきた限りでいえば、男の子は程度の差こそあれ、だいたいにおいて素直で、 本人なりに礼儀正しい ところがありますね。

たとえば、「あの、これ何ですか?」くらいの言い方は普通するよなって思うところを、「あの」もなく、突然、
「これ何け?」
と露骨な富山弁で尋ねてくる男の子が時々いて、ぎょっとすることがままありますが、実は彼は彼なりに礼儀正しかったりするのです。彼は不作法にしているわけでも、えらそうにしているわけでもなく、ただ単に言葉を知らないだけだったりするのです。きっと、彼の父親の言葉遣いをそっくり見習っているだけなのでしょう。

「ああ、それはインドのお香よ」
「どうすんがけ?」
「その三角のお香の先に火をつけて焚くのね」
「火ぃつけんがけ?」
「そう、そしたら煙になっていい匂いがするよ」
「ふ〜ん、どの匂い、いいけ?」

どの匂いがいいかと聞かれても、匂いは好みがあるので答えに困る。
こういうときは、
初心者用 に選んだ匂いのきつくないものを前列に並べているので、まずこれを勧めることにしています。
お客さんが選びやすいように、私が独断で匂いの形容もしています。
ジャスミンは「清らかな匂い」だとか、オーキッド(蘭)は「高貴な匂い」なんてふうにね。

「あ、
青春の澄んだ匂い がいいな」
と言って、彼はライラックのお香を手に取ります。
そうなのです。どういうわけか、高校性の男の子にこの「青春の澄んだ匂い」は人気があるのです。このストレートな言葉に響くものがあるみたいなのです。以前はこれまたストレートな「男らしい匂い」だとか、「若々しい匂い」なんてのも注目されていましたね。
最近は「○○の匂い」というより、単純にオピュームとかユーライク、そしてサーファーにはココナッツが注目されているようです。

「じゃあ、これひとつ」
と彼はお香をひとつ買って帰っていくわけですが、ここで不思議なことに、彼は店を出る直前にこっちを振り向いて、「どうも」というふうに頭をこくんと傾げます。ほんとに不思議なことに、この行為をする男の子は多いのです。
何も買わないで帰るときなんかにも、やはりどういうわけか最後に、「ありがとう」とか、「今度金もって来っちゃ」とか、はたまた「おじゃましました」なんてまるでよその家に上がり込んで帰る時のような挨拶をする子もけっこういたりします。こういう時、男の子はかわいいなあ、とすっかりおばさん気分で私はにんまりするのであります。



ところで、たいていの男の子が本人なりに礼儀正しいのに比べると、女の子はいったいどうなっているんでしょう。女の私がこういうのもなんですが、
性格の可愛い子 容姿だけ可愛い子 、この差がはっきりしすぎているって気がします。同性だからこそチェックが厳しいのかもしれませんけどね。だけどほんとに、容姿ばかり可愛くて、 礼儀わるわる の子っているんですよ。

礼儀わるわるのその一は、店に入ってから出ていくまでずうーっと友達同志でしゃべりっぱなしというパターン。でも若い女の子がおしゃべりなのは当り前だし、「これ、かわいい」とか商品を見て騒いでくれるのはちっとも構わない。
じゃあ何が礼儀悪いかというと、まず、友達の
噂話や悪口 を声高にしゃべりまくること。次に、しゃべりながら 意味もなく商品をいじくりまわす ことです。

この「いじくりまわす」とはどういうことかというと、おしゃべりに夢中で商品をこれっぽっちも見ていないのに、ただ指が寂しいって感じで棚に並んだTシャツなんかを片っ端からくちゃくちゃと触ったり、話のついでに手当たり次第広げてみたりする行為のことですね。よく髪の毛をクルクルいじるのが癖になっている女の子がいますけど、その調子で商品をいじくるわけですよ。

そんな手癖の悪いおしゃべり女の子チームがやってくると、私の神経はどっと疲れてしまいます。
おいおい、あっち向いて商品をいじくるのはやめてよね。あ、あ、白のTシャツをくちゃくちゃしないでよね。白は汚れやすいんだから。こらこら、やたらとシャツを広げるんじゃないよ。ったく、もうどうでもいいから、早いとこ帰ってくれえ。即刻、出ていってくれえ〜〜!
そう心で叫びながら忍んでいると、ようやく彼女たちは、広げたシャツを
無造作に丸めてぽん と置くと、尚もしゃべり続けながら店を出ていくのでした。嗚呼。

ついでに言えば、服を丸めてぽんというのも、不思議なことに男の子より女の子のほうに多いですね。
男の子は広げた服は自分でなんとかたたみ直そうとするし、連れの女の子がいい加減にぽんと置くと、「ちゃんとたためよ」とか言ったりするのだけれど、女の子でそういう気遣いに欠けた子が意外と多いのには驚きます。
とはいえ服をたたむのは店員の仕事なわけですから、ちゃんとたたまなくったって別にいいのです。別にいいのですが、なんというか自分のものじゃないからどーでもいいみたいな態度はやめてほしいし、せめて見苦しくない程度にたたみ直そうという態度くらいは示してほしいものです。
そうです、そういう
誠意とかやる気 というものを、今の学校は内申で評価しているのではなかったか。学校では要領よくやっているのかもしれない彼女達の、 真の内申点 を私は知っているぞ。


さて礼儀わるわるの女の子のパターンその二はというと、
商品をあからさまにけなす という行為です。たとえば友達が商品を選んでいる時、
「えーっ、それヘン!」 とか、
「そんなの似合わないよ」 などとちゃちを入れるわけですね。

売り物に対して「そんなの」って、いったいどんなの?
こういう時はあっさりと「それ」と表現しなさいよね。
しかし、商品にどうこう言っているうちはまだいいのです。聞き苦しいのは、
友達にちゃちを入れる ことですね。

たとえば、リュックを選んでいる友達に、

「黒は○○先輩が持ってたしぃ、赤は○○ちゃんが持ってたしぃ」
と、水を差すばかりで、それに代わる「緑なんかシックでいいんじゃない?」とかいった前向きな提案をまるでしないというパターン。情報を持っていることを単にひけらかし、友達の優位に立とうとしてるようすがみえますね。

「これどうかな?」とジャケットをはおってみる友達に、口先だけで、
「いいんじゃない?買えば?」 と、突き放したように言うパターン。
「○○ちゃんだったら似合うんじゃない?」 という一見聞こえのいいパターンもあります。この言葉だけ読めば、褒め言葉のように思えるでしょうが、その場にいる私には、その態度口調の中に、どうでもいいものを着させようという悪意が見て取れます。「○○ちゃんだったら似合う」という言葉の裏に、「私だったら着ないけどね」という冷ややかさが隠されているようで恐い。

「あ、私のほうが似合う」
な、なにい〜!それって、友達より自分のほうが可愛いってこと?
ここで呆れるのは、そんなことを平気で言ってのける子が実際可愛い顔をした子で、黙って言われている子が地味で垢抜けない子だったりすることです。この場合、地味で垢抜けない子に呆れてしまうのです。顔は可愛いけど性格ブスな子とつきあってる
あんたもあんたよ


これが男の子の場合だと、容姿に関してちゃちを入れることはまずなくて、たとえば、
「おれ帽子似合わんがよ」などと友達が言うと、
「そっか?、被り慣れとらんだけじゃないか?」とか、
「おれも似合わんがよ」なんて友達甲斐のあることを言うので、聞いていて気持ちいいですね。
ただし、彼らはお金に関してちゃちを入れたりするのです。

「それ買うがけ?おまえ金持っとんのお」 てな具合にね。

女は容姿に嫉妬し、男は経済力に嫉妬するのかな。

 

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