「神父様の鞄」より抜粋(その2)

最期の手紙 より


 あきらからは私も沢山の手紙を受け取っている。しかしその殆どが文学上の話題だ。けれど、「最後の手紙」、これは彼の純真高潔な人格を雄弁に物語る素晴らしい手紙だ。私はこれを彼の死の翌日「書留」で受け取った。これをあなたのためにここに書き写そう。
 それはローマ字で書かれている。


1969・12・8(彼は翌日死んだ)
アヌイ神父様
今、部屋ニ帰ッテキタトコロデス。
長イ間、有難ウゴザイマシタ。アシタノ死(大文字)ガ、ヨリヨク迎エラレルヨウ、オ祈リクダサイ。
 母ヲヨロシク。
 母ガカワイソウデス。
 天国デ、神父様始メミナサンノタメニオ祈リシマス。私ガ地上デ完全ニハ出来ナカッタ”愛”(大文字)ノ完成ヲ、天国デ叶エラレルヨウニ、オ祈リクダサイ。
デハ、神父様
 サヨウナラ
 マタ、オ会イシマショウ。
 妹サント一緒ニオ待チシテイマス。
    愛ヲコメテ、
                          アグスティノ・アキラ

 コノテガミハダレニモミセナカッタ。ダイジニトッテオキマシタ!(すまないね、うっかりローマ字で書いてしまった)
あきらは遂に最後の恩寵を得た。彼は天国に居る。そして我々皆のために祈ってくれる。


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